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今日の記事は、歯根破折と呼ばれる、歯の根っこが折れたり割れたりするトラブルについての記事です。

 

歯を失う人が見落としがちな「根が折れる」事実

歯周病、虫歯ほどではないが警戒が必要だ

歯ぎしり対策も有効です(写真:RyanKing999/iStock)

歯を失う2大原因とされるのが歯周病と虫歯。厚生労働省によれば2005年に全国二千余の歯科医院で行われた全国抜歯原因調査で、抜歯の主原因として歯周病は全体の42%、虫歯は32%と7割以上を占めました。

一方、あまり知られていないのが歯の根っこが折れてしまう「歯根破折」です。同じ調査で11%と歯を失う原因の3番目に挙げられます。

歯根は歯ぐきや骨の下に隠れているため、自分で見ることはできません。歯根破折を防ぐにはその症状や原因、治療法などを知っておく必要があります。

歯根破折で起こる症状

歯根破折が厄介なのは、発見しにくいということです。目では見えず、レントゲンでもまったく見られないことも多く、初期の段階で見つかることはまれと言っていいでしょう。

歯根破折を起こすと次のような5つの症状が起きます。初期症状より順に挙げていきましょう。

1.歯がしみる

神経がある歯の場合、ヒビが大きくなるにつれ、冷たいものや熱いもので染みるようになってきます。そのため知覚過敏と診断されることがよくあります。

2.噛み方によって痛みが強くなる

噛む場所によって痛みが強くなったり、フランスパンやスルメのような、すり潰さなければ食べられない物のみで痛みを感じる、というような特殊な痛み方をすることがあります。これはヒビが入ったところが、噛み方によって動くことで痛みを感じるからです。

3.歯がズキズキする

神経のある歯が破折したところから感染を起こすと、神経が炎症を起こしてズキズキ痛み始めます。見た目には異常がないのに激痛を訴えるため、神経痛と診断されてしまうこともあります。

4.歯ぐきが赤く腫れる

破折した歯根の周りが全体的に赤く腫れてきます。この段階になるとようやくレントゲンで破折した状態が確認されるようになります。歯ぐきから膿が出てくることもあります。

5.歯がグラついてくる

破折がさらに進むと歯がグラグラし、破折片が取れてくることもあります。

そして歯根破折の原因は次の6つです。

① 歯ぎしり・食いしばりの癖がある

最も歯根破折の原因で多いのが、睡眠中の強い歯ぎしりや食いしばりです。日中の何倍もの力で長時間にわたって力が加わるため破折の原因となります。また、日中力仕事やスポーツで食いしばることが多い、というような人は歯根破折のリスクが高くなります。

② 神経のない歯がある

神経を取った歯は水分の抜けた枯れ木のように、衝撃に対して弱くなり、割れやすくなります。

③ 太い金属の土台が入っている

神経を取った後、歯が薄くなっているところに太い金属の土台が入っている場合、噛むたびにクサビの力が歯根の方向に伝わるため、歯根が割れやすくなります。

④ 噛む力が強い

噛む力が強い人は歯が割れるリスクが高いです。特にエラの張った成人男性に多く見られます。

⑤ 硬いものを好んで食べる

硬いものをガリガリとよく食べる人は歯に過剰な負担がかかってしまいます。

⑥ インプラントが入っている

インプラントの噛み合う歯、インプラントの隣の歯は強い力がかかりやすく、歯根破折しやすいことがわかっています。

歯根破折の治療法

歯根破折の治療法はヒビの入り具合によって変わってきます。

破折が浅い位置で止まっていればかぶせる治療をします。破折線が比較的浅い位置で止まっていて、神経が残っている場合には神経を取る処置をした後にかぶせて歯を保存する方向で様子を見ます。

一方で歯根の深い位置で真っ二つに割れていれば、ほとんどの場合は抜歯となります。

抜歯を避けるための治療法

しかし、破折の状況によっては歯科用接着剤で破折した部位を接着させ歯を保存する方法や、矯正治療を用いて歯を引っ張り上げて破折した部位を歯茎より上に出すことで極力歯を抜かない場合もあります。やり方は3つです。

1つ目は内側から接着剤で修復する方法です。口腔内接着法と呼ばれ、内側だけのヒビに限られた初期の破折に対して行われます。ヒビの部分を削り、強力な接着剤で修復します。

2つ目は1度抜いて接着剤でくっつけて戻す方法です。真っ二つに割れている場合で歯がもろく弱っていない場合に使われます。口腔外接着再植法と呼ばれ、1度歯を抜いて強力な接着剤で接着し、抜いた歯をまた元に戻して固定する治療が行われる場合があります。

最後はヒビの下縁まで矯正力で歯を引っ張り上げる方法です。ヒビの位置が比較的浅い場合、エクストルージョンと呼ばれる手法で歯を矯正力で引っ張り出してヒビのラインを歯茎の上まで出し、ヒビを取り除いた後、かぶせ物をします。これにより感染を防ぐことができます。

歯根破折はどのようにして予防したらよいでしょうか。いくつか挙げておきます。

歯ぎしり・食いしばり対策
・日中に食いしばる癖がある場合はやめる
・スポーツなどで食いしばってしまう場合にはスポーツ用マウスピースを着用する
・夜間の歯ぎしりにはナイトガード(マウスピース)を着用する
・ボトックス注射で咬筋を緩める

 

虫歯予防
・神経を抜くことにならぬよう、虫歯がひどくなる前に歯医者に行く
・定期検診を受け、虫歯予防に努める

 

食事中の注意
・硬いものをガリガリ噛むことは極力控える
・神経を抜いた歯、インプラントの部分では力を入れすぎない

 

神経を取った後の治療
・硬い金属の土台を避ける
・かぶせて治す

 

歯はもともと丈夫なものですが、過剰な力がかかりすぎるとやはり壊れてしまうものです。歯の破折は中年以降から徐々に増えてきます。それまでの力の蓄積が発現してくるのでしょう。「自分の歯は丈夫だから」と過信して毎日硬いものを噛む習慣がある人は要注意です。歯に力がかかっている自覚のある人は歯科医師と相談し、予防対策をしましょう。

出典 

 

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