高齢者の歯の本数と認知症の相関関係は言われて久しいですが、
今日の記事はアルツハイマー型認知症に特化したものです。
以下記事です。
アルツハイマー型認知症の対策には「歯周病予防」が有効と明らかに
老後を考えたとき、多くの人々を不安にさせるのがアルツハイマー型認知症です。
一般的にアルツハイマー病と呼ばれるこの症状は、発症の15年前から海馬の萎縮が始まり、5年前から「物忘れ」などの具体症状が現れ始めます。そして発症5年以内には要介護とされる状態になってしまいます。
発症時点で海馬はかなり萎縮してしまっているため、現状この病気の治療方法は存在していません。
政府の示したこの病気に対する方針も、できる限り発症や進行を遅らせる「予防」に重点が置かれています。
では、どうすればこの恐ろしい病の進行を遅らせることができるのでしょうか?
新しい研究は、この「予防」に驚くべき解答を出しています。それは歯磨き粉のCMで毎日のように耳にしている「歯周病」を防ぐというものです。
この研究は、九州大学と中国吉林大学との共同研究グループから発表され、11月12日付けで国際学術誌のオンラインジャーナル「Journal of Alzheimer’s Disease」に掲載されています。
脳の認知機能が低下するアルツハイマー病の明確な原因については、現在のところ明らかになっていませんが、非常に有力視されている原因はアミロイドβ(Aβ)と呼ばれる毒性のあるタンパク質が脳内に蓄積するためだと考えられています。
このAβが神経細胞に沈着したものがいわゆる老人斑と呼ばれる脳にできたシミのようなもので、アルツハイマー病の発症した脳にはこのシミが多発しています。
研究によるとアルツハイマー病発症の25年前からAβの蓄積が始まるといいます。
では、この有害なタンパク質はどこから大量に発生しているのでしょうか? 実はそれがまるで無関係に見える歯の病気「歯周病」と関係しているのです。
歯の病気と脳の病気は一見結びつきがなさそうに感じます。しかし、アルツハイマー病患者の脳からは歯周病の原因菌とされるPg菌というものが検出されていて、以前からその関連性が注目されていました。
今回の研究チームは、歯周病がアルツハイマー病の発症と関係していることを明らかにするため、中年のマウスにヒトの歯周病炎症組織および歯周病の原因菌を投与し、その肝臓を調査しました。肝臓は脳内を始め血中に生産された成分の多くが集まる場所です。
結果、歯周病菌が投与されたマウスからはアルツハイマー病の原因物質と考えられているタンパク質Aβが増大していることを発見したのです。
マウスがこのような状態になった原因は、マクロファージにありました。マクロファージは免疫系を司る白血球の一種で、細菌などの侵入に反応して炎症(免疫反応の一種)を起こします。歯周病菌によって炎症を起こしたマクロファージは、アルツハイマー病の原因となるAβを作り始めるのです。
つまりアルツハイマー型認知症の原因は、歯周病菌に感染した白血球が原因だったのです。
アルツハイマー型認知症の進行は非常に長い期間の中で進行する病気です。それは25年近くを掛けて体内に蓄積されていくAβタンパク質が原因です。これが歯周病菌によって引き起こされているという事実は、歯科医療によるアプローチがアルツハイマー型認知症の進行を遅らせるのに有効という驚くべき可能性を示しています。
そうして考えてみると、歳をとっても頭のはっきりしているご老人は綺麗な歯をしていることが多いのかもしれません。
80歳まで20本の歯を保つ、なんて標語は歯医者さんに行くとよく見かけますが、これは脳を健康に保つためにも必要なことのようです。