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人間の歯は成人で32本生えます。

20歳前後に上下左右の一番奥に生えてく来るのが親知らずです。

けど、上下左右の親知らずがしっかりかみ合わせて揃ってる方ほんの一握りで、

そんな不遇な親知らずは抜歯になることが多いのも事実。

Q.親知らずとは何ですか?

親知らずとは、奥歯の最も奥にある歯で、第三大臼歯と呼ばれる歯になります。生えそろうのが10代後半から20代。それ以降になることもあります。人によっては出てこないこともあります。

昔は、寿命も短かったので、親がいないうちに生えてこないこともあったので、親知らずと呼ばれています。智恵を得たころに生えてくると考えられ、「智歯」という名前もあります。英語でも「wisdom(智恵) tooth(歯)」と言います。また、最近ではもともと親知らずがない子どもが増えてきています。進化か? 退化か? 議論されるところですね。

Q.親知らずが生えそろう人とそうではない人の違いは?

あごにスペースがあると、まっすぐに生えてきます。縄文時代には、人のあごも大きかったので、親知らずはまっすぐに生えていました。現代の人では、あごが小さくなったことから、まっすぐ生えている人はまれになっています。顎の大きさは変わらなくて、歯並びのアーチが小さくなったというデータもあります。いずれにしても、きれいに並んで揃うスペースがない人が多いのです。

また、生えている人であっても、曲がって生えている人が多くなっています。なぜ曲がって生えてくるのかというと、生えてくる途中で止まってしまったからなのです。というのは、歯は真下からまっすぐ上に向かって生えてくるのではなく、Lの字のカーブを描くように途中で上向きに向きを変えて生えてくるからです。親知らずが生えてくる時に、手前の歯に引っかかって止まってしまい、斜めになってしまうことが多くあります

Q.親知らずがときどき痛むのはどうして?

親知らずは口の奥にあるために、歯磨きで磨くことが難しく、汚れが残りやすく、そこで細菌の増殖が起こりやすくなります。結果として、親知らずは感染を起こして、炎症を起こしやすくなります。

そうした場合に、親知らずの周りの歯肉に痛みが生じます。骨の中に完全に埋まっていれば問題ないことが多いのですが、少しでも出てきてしまうと細菌感染してしまいます。ほとんど埋まっているのに、むし歯や歯周病になって痛むことも。放っておくと、腫瘍の原因になることもあります。

また、上あごの親知らずが生えている場合、下あごの歯肉に当たって痛むことがあります。上下が揃ってまっすぐ生えていないと、トラブルの原因に。

Q.親知らずを抜いた方がよいのはどういうとき?

親知らずを抜くのは大きく3つの理由があると思います。ひとつは、手前の歯を守るため。手前の歯との接触によって、親知らずだけではなく他の歯にも悪影響が及ぶことがあるからです。親知らずが埋まっていると、手前の歯の根っこを溶かして虫歯を起こすことがあります。そうした場合には抜くことを考えてよいと思います。抜くのは怖いものですが、患者さんには手前の歯を残すために抜きましょうとお話しします。

次は、感染によって炎症を起こしているときです。親知らずの感染が続いていると、全身に影響があると考えられています。リンパ節が腫れますし、口の周囲の皮膚や手のひらなどの皮膚が荒れることもあります。慢性的な炎症はさまざまな影響を及ぼしてくるのです。歯周病のような問題があって、ずっとうみが出ているような状況であればよくありません。親知らずが歯周病菌の巣になっていることもあります。

もうひとつは歯並びです。親知らずは、手前の歯を押すために、歯並びが徐々に悪くなる原因になることがあります。そうしたときにも抜くことを検討するのがよいと考えられます。あごの上下のバランスが悪いときには、顎関節症を招くことも。

ただし、必ず抜かなければならないというわけではありません。親知らずがあっても生活に支障がないようなときには、無理に抜く必要はないのです。生え方の個人差が大きいので、メリットとデメリットを歯医者さんと相談した上で決めるとよいと思います。もし抜くなら、骨の再生や治癒を考えると元気な若いうちがよいかもしれませんね。

Q.親知らずの治療はどこで行う?

親知らずが見えている場合や、埋まっていても浅い場合には、口腔外科に対応しているクリニックで対応してもらうのがよいでしょう。CTというレントゲンがあるところだと、より正確に診断できます。

親知らずが深くに埋まっている場合は、特に要注意です。上の親知らずであれば、親知らずが鼻腔につながる「副鼻腔」に近いとき、下の親知らずであれば「神経」と近いときには、手術に伴うリスクが高くなります。そのような場合はCTによる診断が重要になります。

口腔外科と書いてあるクリニックでよく相談して、クリニックで抜歯するか、総合病院で全身麻酔の抜歯手術を受ける方がよいのか判断するとよいと思います。クリニックでも、簡単な全身麻酔ができるところもあります。

Q.親知らずの治療はどう行うの?

多くの場合、親知らずは、外来で手術を行うことになります。まずは、親知らずの周囲の局所麻酔を行います。その上で、歯肉を切って、歯が見える状態にして、ドリルや超音波で歯や骨を削り、分割して摘出します。できるだけ骨を削らず、歯を小さくして取り出すことがポイントです。

また、超音波を使うと、神経や粘膜などのやわらかい組織を傷つけないで治療ができるので、より安全に手術を行うことができます。歯を摘出した後には、その穴を抗菌薬と止血薬を投与して、縫合します。その後は、抗菌薬や痛み止めを使います。場合によっては止血薬を使うときもあります。

関連する治療になりますが、親知らずを活用する移植治療もあります。いわゆる奥歯である大臼歯を抜く必要があるとき、親知らずを移植して抜いた歯の代わりに使えるようにする治療です。

もうひとつ、親知らずの手前の歯がダメになって抜いたときに、奥の親知らずを引っ張って矯正し、手前の歯の代わりに使うという治療もあります。約半年から1年かかります。

Q.親知らずの治療を受けるときに気をつけることは?

親知らずの治療を受けるときは、ほとんどの人が痛みや腫れについて恐怖感を持つと思います。そうしたときには、気持ちを歯医者さんに素直に伝えることがいいでしょう。わかってくれるはずです。必要があれば、気持ちを落ち着かせるような薬を使うこともできます。胃カメラを行うときに使われる、半分眠ったような状態にする鎮静薬を使うのです。おなかを切る手術で使われる全身麻酔が行われることもあります。

出血や感染を伴う手術になりますので、できるだけ体調が優れている方がよいでしょう。服用している薬や治療中の病気がある場合は、必ず伝えるようにしてください

Q.親知らずを抜いたメリットは?

歯を抜くことで、感染による炎症はなくなります。もし炎症が残っている場合には、ほかの感染源があるということなので注意すべきです。また、虫歯を防ぐこともできます。さらに、ほかの歯を押すような力が取れて、歯並びがこれ以上悪くなることを防げます。親知らずを抜いた後にかみ合わせが乱れているなら、歯科矯正治療をお勧めします。

親知らずは冷凍保存できます。将来の移植治療のためにとっておくだけではなく、親知らずには歯髄幹細胞という細胞があり、研究途上ですが、他の臓器の再生医療に応用できる可能性があります。赤ちゃんのへその緒から取れる臍帯血を保存するのと同じように、希望する方は残すことを考えてもよいと思います。

Q.逆に親知らずを抜くデメリットは?

抜歯手術のリスクです。手術の際の出血、術後の腫れや痛みだけでなく、特に神経に近い場合は、麻痺が残ることがあります。上あごの親知らずが副鼻腔に入ってしまった場合は、取り出すのにさらに手術が必要になることがあります。

浅い親知らずを抜くのには大きな問題はありません。手術の際のリスクはあまりないのですが、歯を抜いた後にその対応が必要になることはあります。「ドライソケット」といって、感染して治りにくくなることがあります

また、親知らずを抜いた後の回復が不十分で、凹みができて、手前の歯の奥に近い歯肉が沈む込む場合もあります。このときには汚れがたまりやすくなります。親知らずによって全体のバランスが変化し、かみ合わせに違和感が生じることもあります。そうしたときには、歯医者さんに相談するとよいでしょう。

Q.親知らずを抜くと腫れるのはなぜ?

親知らずを抜いた後は、粘膜や骨が傷ついてしまうので、それを治癒させようという身体の反応が起きます。そこに血液が集まり、キズを治そうとします。すると、免疫細胞が集まり、どうしても腫れてきます。腫れることそのものは悪いことではありません。身体が治そうとしている反応であると知っておくといいでしょう

どの程度腫れるかは、感染などの程度によって変わってきます。多くの場合は2、3日から1週間続きます。腫れて痛そうに見えても、実際は痛みがないことの方が多いです。また、内出血があると、あざのように青くなることもあります。青あざは1週間ほどでオレンジから黄色へと変化し消えていきます。

Q.親知らずを抜かない場合のケアの注意点は。

親知らずをあえて抜かないときには、 感染を防ぐことが大切です。歯に汚れがたまりやすいことを認識して、歯磨きを念入りにするように心がけます。通常の歯ブラシでは、ほおが邪魔になって届かないこともあります。そのときには、先が三角のタフトブラシと呼ばれるタイプの歯ブラシを使うこともできます。かみ合わせが悪くなったり、あごの関節に異常を感じたりするようならば、抜いた方がよいでしょう。

Q.親知らずを抜いてからのケアはどうする?

歯を抜いた直後には、圧迫して止血するようにします。歯肉を切ったときには縫うことが多くなります。出血は止まってきます。歯を抜いた後は、麻酔が切れてくるにつれて、痛みや腫れが強くなってきますので、痛み止め薬を使ったり冷やしたりするとよいでしょう。親知らずの生え方によって、出血や痛み、腫れの程度は変わってきます。手術後の説明をよく聞くとよいでしょう

歯を抜いた後は歯肉に穴が空いており、必ず感染が起こってきます。穴が空いている間は、よくうがいをして汚れを取ることが大切です。穴は1か月くらいで埋まり、半年くらいで骨が再生し歯肉にほぼ覆われます。感染がなかなか治らないときに、穴が空いたところに骨が見えるドライソケットと呼ばれる状態になることがあります。歯を抜いた後については、歯医者さんで経過を定期的にみてもらうようにします

Q.親知らずを抜くためにかかる費用は?

親知らずを抜くための費用は、通常のX線を取るか、CTを取るかといった検査にもよるのですが、3000円から1万円という場合が多いと思います。

大学病院や総合病院で、入院して全身麻酔で抜歯する場合は、もっと費用が必要になります。参考までに、保険外の方法や海外で自費診療で抜歯をする場合は、4万円~10万円前後の場合が多いようです

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